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ミル、海運界、造船業界の三者は、三位一体の関係となり、特に高度成長期においては、極めて強い関連性を保ちながら伸びて行ったもので、世界の海運界からも常に注目される立場にあった。
この時期の我が国の主要産業荷主からの日本海連への要請は、大量輸送、安定輸送、そして低コスト(低運賃)の追求であり、日本海運は、日本造船業界とともに、船舶の大型化、近代化、専用船化等により対応、併せてFOC(便宜置籍)化等により競争力確保を進めていった。
同時に、日本海連は、大口荷主である、鉄鋼ミル、石油業界、紙パ業界、さらには自動車産業からの長期積荷保証によって、国家資金や民間の資金が大量に導入され、数多くの船舶建造が実現し、いわゆるインダストリアルキャリアー、コミッションキャリッジの色彩を強めていったのである。
その反面、戦前の日本海運が有していたような、リスクテイキングな本来のトランプ(不定期船)経営の色合いがうすくなっていった。
もちろん、この時期においても数多くのいわゆるフリー船も建造手当てされてはいったが、不定期船経営の重点がコミッションキャリアーに置かれたことは事実であり、手当てされたフリー船も大部分専航船や長期のCOA(数量輸送契約)の対象船として投入されて行った。
日本海運の三国間輸送
三国間輸送のマーケットは、基本的に極めてオープンな市場であり、当然市況性の強いものである。戦後の日本海運の成長の基盤になった荷主からの長期積荷保証によるコストベースの安定的な専用船経営とは異なるものであり、そのほとんどの積荷契約がスポット契約であり、せいぜい長期契約といっても一〜三年間のCOAが多く、当然のことながらリスクデイカー的な海運経営が要求されるものである。加えて、新造船建造のための資金手当においてはファイナンサーは常にリスクの軽減を求めて来、その点からも営業活動が限定されていった。
自国で巨大なカーゴでマーケットを持つ日本海運が、その経営形態をだんだんコミッションキャリアー的な性格を強めて行き、必然的にハイリスク、ハイリターン的な海運経営能力を喪失して行ったともを言えよう。
もちろん、不定期船分野に於いて日本海運も一〇〜一八%前後の三国間輸送比率を持ってはいたが、その内容はかなりの部分で、日本海運の特性であるところのインダストリアルキャリアー的色彩を持った三国間トレードであったと言えよう。
すなわち、ケープサイズ(十万重量トン以上の船型)においては、特に酒豪州/欧州の鉄鉱石、東豪州/欧州の、石炭、また南アフリカ/欧州の。石炭輸送において、日本商船隊は活発な三国間輸送の実積をあげて来ているが、これらは殆ど我が国鉄鋼ミル向けの大西洋ソースのケープサイズカーゴ、すなわち北米東岸積みの石炭やブラジル積みの鉄鉱石の運賃競争力確保のための手段として位置付けられる。
また、パナマックス型(パナマ運河を通航可能な六万重量トン級船型)においても大西洋水域から日本向けの大宗カーゴである米国ガルフ積み穀物や米国東岸積みの石炭とのコンバインを念頭において、豪州/欧州のアルミナ、ボーキサイトやカナダ酉岸/欧州の石炭が、日本商船隊の三国間カーゴとして輸送されている。
この傾向はこれら大型船に限ったものでもなく、スポット配船的な色合いの強いハンディータイプ(二〜四万重量トン船型)においても例外ではない。
さらに加えて、もう一つの特徴は、三国間トレードが日本商船隊の専用船、専航船の船腹調整弁としての機能が見られる点であろう。
これは日本荷主が減産などにより彼等の既契約船腹を調整するため、それらの船腹の転配先として三国間に投入するケースである。

 

 

 

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